自由と生存のメーデー07

東京都公安委員会に審査請求を行いました

4月30日のメーデーデモに対する警視庁・新宿署の不当な介入(処分)は到底納得できないものだったので、6月14日に上級庁(監督機関)である東京都公安委員会に対して、警察の「民主的」監督・指導を要求するために審査請求書を提出してきました。なお、警察法の規定により都公安委員会の庶務(執務、実務)は警視庁の「関係部署」の警察官の職掌するところであり、不本意ながら請求書は公安委員に直接手交することができず、彼らに預けることとなりました。後日、請求書を受け取った公安委員が裁決するという手続きとなります。

行政不服審査法にもとづく審査請求書

東京都公安委員会
委員長 大西勝也 殿

審査請求人の名称並びに住所
名称:プレカリアートメーデー07代表 (代表者名省略)
住所:(省略)

審査請求に係る処分
警視庁新宿署署長または高橋警備課長の指示の下に警視庁が行った以下7項目の処分の適正性について審査を請求する。

(1) 救護車両の活動妨害
(2) ビラ配布への妨害
(3) デモ行進参加者の離脱妨害
(4) デモ行進への参加妨害
(5) 参加者への後方からの「推進規制」
(6) デモ行進への誹謗中傷
(7) 警視庁公安部によるデモ行進参加者への写真並びに動画の撮影

審査請求に係る処分があったことを知った年月日
2007年4月30日

審査請求の趣旨及び理由
07年4月30日に実施したプレカリアートメーデー07のデモ行進(以下「デモ行進」)に対し、警視庁が行ったこれら7項目にわたる処分は、以下各項目に即して述べるように、国が憲法21条に保障する表現の自由を著しく侵害するものであり到底許容できない。そもそも警察官はその責務を全うするにあたって、「不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない(警察法2条2項)」のであって、法令遵守と憲法擁護義務(憲法99条)に違反してこのような処分を行なったことは「民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障」した警察法第1条に反している。また、それぞれの処分は、「人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合」に限定して市民の行為を制止する権限を警察官に認めた警察官職務執行法第5条に違反して行われた。主催者は処分が行われた現場で警視庁新宿署署長または高橋警備課長に抗議したが、処分は撤回されず、かつ当該処分に関する行政不服審査法に基づく異議申立てができる旨も教示されなかった。よって行政不服審査法第5条と同20条1号に基づき、警視庁を監督する東京都公安委員会に対し、以上7項目の処分が憲法ならびに警察法、警察官職務執行法など関係諸法規に照らして適正であったのか否かについての審査を請求する。

(1) 救護車両の活動妨害
主催者は当デモ行進の最後尾に、行進中に体調を崩した参加者を乗車させるための救護車両を1台つけ、参加者の救護に当てることを予定していた。その旨は東京都公安委員会に提出した許可申請書に記し、同委員会の許可を受けている。にもかかわらず警視庁新宿署署長または高橋警備課長は、出発時からデモ後尾、救護車の前に透明の盾を持った機動隊員5、6人を配置し、救護を必要とする参加者が救護車両にたどり着くことを阻んだ。このため主催者による参加者への救護活動は不可能になった。この処分に対する主催者の抗議に対し、高橋警備課長は処分の理由を「右翼の襲撃からデモ行進を守るため」と説明したが、どのような右翼団体の襲撃が予定され、どれほど差し迫った事態なのかについてまったく説明しなかった。都公安委員会の許可を無視し、救護車両の活動を妨害した警視庁による処分は不当である。

(2) ビラ配布への妨害
近隣住民や通行人にデモ行進の趣旨を伝えるため、主催者はデモ行進に併進しながら歩道でのビラ配布を企画した。ところが、警視庁新宿署署長または高橋警備課長は、歩道でビラをまいていた主催者を警察官に取り囲ませ、その身体に触れるなど有形力を行使してビラまきを不可能にした。この処分にどのような職務執行上の正当性があるのか主催者は警察官に質し抗議したが、警察官は規制の理由について何も回答しなかった。理由なくビラ配布を妨害するこの処分は表現の自由に関する重大な侵害であり不当である。

(3) デモ行進参加者の離脱妨害
警視庁の警察官は、随所でライトグリーンのテープを歩道・車道の間にはる、参加者の身体に触れて押しとどめる、あるいは「デモからいちど出たら入れません」「もう戻らないですね」などと参加者に告知、確認することによって、デモ行進参加者の離脱を妨げ続けた。この処分には警察官職務執行法にもとづく正当性がないばかりか、この処分によって、参加者はデモ行進への部分的参加という表現形態を選択できなくなった。しかも主催者が質し抗議しても、警察官は規制の理由を一切答えることがなかった。警察官が表現の形態を有形無形の力を用いて指示することは、表現の自由を著しく侵害するものであり不当である。

(4) デモ行進への参加妨害
警視庁新宿署は歩道に数十名におよぶ警察官の一群を配して、デモ行進と並進しながら拡声器を用いて「危険だからデモ行進に入らないでください」というアナウンスを続けさせた。また、随所で隊伍を組んだ制服警察官10名程度を歩道と車道との間に配置し、通行人がデモ行進に参加することを阻んだ。警察官が市民に対し、デモ行進に参加しないように呼びかけることは、「不偏不党且つ公平中正」を旨とすべき警察官の責務に違背すること明白であり許容されるべきではない。また、通行人とデモ行進との間に警察官を立ちはだからせ、主催者の表現を妨害し、通行人がデモ行進に参加する権利を奪う処分は、憲法、警察法、警察官職務執行法に反しており到底許すことができない。

(5) 参加者への後方からの「推進規制」
警視庁新宿署は、デモ行進の最後尾の参加者を5、6名の警察官が透明な盾を用いて圧迫するなどして追い立てる、いわゆる「推進規制」を行った。しかもこの「規制」はデモ行進出発の直後から終了まで継続して行われたもので、行進の滞留を解消するために行われた処分ではありえない。参加者と主催者は「推進規制」を行った警察官と新宿署署長または高橋警備課長に対し、危険だから圧迫と推進をやめるように再三にわたり伝えたが、警察官および高橋警備課長はこれを無視し不当かつ危険な「規制」を最後まで続けた。そのため行進の最中に参加者が一名転倒させられ負傷している。デモ行進の参加者を危険にさらすこの処分は不当である。

(6) デモ行進への誹謗中傷
デモの先頭につけられた第八機動隊の指揮官車は、大音量の車載拡声器を用いて、デモ行進が車両の通行を妨げているとのアナウンスを続けていた。また、歩道に配置された警察官は「一般の方に迷惑がかかります」「歩行者に迷惑をかけています」などと拡声器を用いたアナウンスを続けていた。そもそも表現の自由は交通に優先して保証されるべき権利である。また、具体的な交通への支障の説明も調整もなく、警察が一方的にこのような宣伝を行うこと自体が不当である。加えて歩道で隊伍を組み、歩行者の通行を妨げていたのは制服・私服の警察官であるにもかかわらず、デモ行進の主催者と参加者が交通を妨げていたかのように宣伝したことは不当である。

(7) 警視庁公安部によるデモ行進参加者への写真並びに動画の撮影
警視庁公安部は私服警察官を歩道に配置して、デモ参加者ひとりひとりの肖像を写真機およびビデオカメラを用いて撮影し続けていた。主催者と参加者がこれに抗議しても、私服警察官はこれに一切答えることなく、撮影の理由についても説明をしなかった。参加者個々の肖像を撮影することは、デモ行進の主催者と参加者を犯罪者視し、参加者の肖像権を侵害したものであり不当である。

処分庁の教示の有無およびその内容
デモ行進の性質上、教示を求めるまでもなく処分庁が警視庁であることは明白であった。

審査請求の年月日
2007年6月14日

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